今回の記事では、いちよし証券が出したコロプラのレーティングに対する管理人の分析を書きました。
いかに証券会社がいい加減なレポートを出すのかということが分かって頂けると思います。
いちよし証券がコロプラのレーティングを格下げ
2019年12月3日に、いちよし証券がコロプラのレーティングを修正しました。
レーティング: B ⇒ C(格下げ)
フェアバリュー: 610円 ⇒ 1020円
同日のコロプラ終値: 1241円
いちよし証券が算出したフェアバリューがコロプラの現値より大幅に低かったことから、Y板やツイッターで騒がれていました。
実際に、レーティング修正の翌日にはコロプラの株価が急落しました。
まぁよくあることかなと思ってましたが、レーティング情報の詳細を確認すると・・・
「レーティングの前提は20年9月期の営業利益が前期比2.8倍(約83億円)」
ん?
営業利益83億円!?
これは・・・
コロプラの4Q決算を見たら、いちよし証券の想定はおかしいと思う
コロプラの決算資料を見ると、4Q期間(7~9月)だけで営業利益24億円稼いでいるんです。
これは、9月にリリースしたDQWが19日間しか寄与してない数字です。
実際は、4Q期間中に白猫周年イベがありましたのでDQW単体の営業利益は14億円くらいだったかもしれません。
それにしても、DQWが年間で寄与する20年9月期の営業利益83億円という見通しはおかしいと言えます。
本記事執筆時点ではまだ終わっていないものの、1Q期間中(10~12月)においてもDQWは平均月商90~100億円前後の勢いを保っているとセルランから推測されます。
つまり、ざっくりコロプラの取り分30%、DQW単体ネット売上の営業利益率70%で想定すると1Qだけで営利57億円くらい見込めます。(以下の公式参照)
平均月商90億円 × 3か月 × 30%(スクエニからの想定取り分) × 70%(営業利益率) ≒ 57億円
※DQW単体の売上が大きいので、利益率はもう少し高いかもしれない
スクエニからの取り分が25%だったとしても、いちよし証券の年間営利83億円は無茶苦茶だということが明確だと考えています。
DQWは意外とコストを食っていない
前の節の想定を見ると、いくらネット計上だからといってDQW単体の営業利益率を70%と想定するのはいかがなものかという意見が出そうです。
ところが、管理人の分析ではDQWは意外とコロプラの費用を圧迫していないと見ています。
そう考える根拠はコロプラ決算資料の費用構成スライドです。
説明文に「DQWの影響以外に大きな変化なし」と書かれています。
では逆に、DQWの影響でどの費用が変化したのでしょうか?
それは赤丸で囲んだ部分ですが、売上に対するPF決済手数料の比率です。
同じ行に「ネット計上案件の影響で売上比率が減少」と書かれていますが、ネット計上案件とはDQWのことを指します。(ネット計上ではスクエニがPF決済手数料を払う)
尚、PF決済手数料の金額自体はQ on Qで6億円くらい増えていますが、これは白猫プロジェクトの売上がQ on Qで20億円くらい増えたからです。(周年イベント)
PF決済手数料以外の費用項目をQ on Qで見てみると、大きく変化した項目はありません。
一般的に、ソシャゲをリリースした月は費用が多めに掛かります。
減価償却費が乗ってくるのと、ツイッターなどでのプロモ費用、初期アクセス集中対策のサーバー費用などが必要ですので。
つまり、DQWが始まってから劇的に増加するようなコストはなさそうだと言えるのです。
コロプラはソシャゲ開発費を先行計上していると考えられる
前の節で少し触れましたが、一般的にソシャゲの費用の中で減価償却費というものがリリース後に掛かってきます。
減価償却費が結構バカにならなくて、営業利益を圧迫することがままあります。
しかし、コロプラについては開発費用を先行計上していると考えられます。
以下で、違いを見てみましょう。
前提として、月の開発費用5000万円、開発期間2年でゲームを作る場合を考えます。
【費用先行型】
開発費用を毎月費用計上します。
つまり、毎月5000万円の費用を計上し、24か月で12億円の費用がかかることになります。
リリース後は開発費用が掛かりませんので※、利益率は高くなります。
※実際には運営の人件費やサーバー代などは発生する
【資産計上(減価償却)型】
開発費用を毎月無形固定資産として計上します。
5000万円×24か月で、ゲームリリース直前には12億円分の無形固定資産が計上されることになります。(BS上ではソフトウェア仮勘定などと記載される)
費用化しませんので、開発中は利益圧迫が小さくなります。
一方で、ゲームをリリースした後は減価償却費が発生します。
ソシャゲの償却期間は2~3年程度が多いと言われていますので、2年としたら毎月5000万円程度の減価償却費がリリース後に発生します。
※運営の人件費やサーバー代などは費用先行型と同様に発生する
費用先行型と資産計上型のどちらが優れているとは言えませんが、少なくともリリース後のことを考えると費用先行型の方が利益が多くなります。
そして、コロプラは費用先行型の経理処理を採用していると考えられます。
その根拠はBSにソフトウェア仮勘定やそれに類する項目が見当たらないからです。
(流動資産の項目に「仕掛品」があるが、金額的に考えてもソーシャルゲーム開発分ではないと考えられる)
このように、リリース後に減価償却費が発生しない会計処理という点でもDQWはドル箱タイトルになっていると言えますね。
いちよし証券の意図が見えない
いちよし証券の20年9月期営業利益83億円想定が無茶苦茶だとしたら、当然のことながらフェアバリュー1020円という数字も全く信憑性がありません。
さらに、いちよし証券は21年9月期、22年9月期の営業利益見通しも出しています。
それによると、21年は11.4%増益、22年は4.9%増益予想とのこと。
これを見て思うのは、ソシャゲ会社の2年後3年後を予想する時点で大変ナンセンスです。
2年後3年後のDQWの勢いを想定することは困難ですし、新規ゲームパイプラインの中身も一切明らかになっていません。
このような状況で3年後の予想まで出すいちよし証券は非常にいい加減であると管理人は痛烈に批判したいと思います。
なぜ、いちよし証券がこのようなフェアバリューを出したのかは分かりません。
単純に知識・実力不足によって出してしまった予想なのか、あるいは意図的に株価を下げる目的があったのか。
個人投資家は証券会社、機関投資家といった看板に弱いので、彼らの名義でレーティングを出されると簡単に誘導されてしまいます。
証券会社・機関投資家は、とてもプロとは呼べないような仕事をすることがよくあるので注意しましょう。
最後に信じられるのは自分だけです。
個人投資家各々で企業分析の力を磨いていくようにしましょう。
管理人のツイッターアカウントになります。
宜しければフォローをお願いします↓